【登山中のファーストエイド】捻挫・骨折したときのファーストエイド(応急処置)について色々

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先日友人と行った燕岳~常念岳縦走で、友人が下山中に骨折しました。
彼女もようやくギプスが取れ、近場の山をなんとか歩けるまで回復しました。
心情的にもひと区切りついたので、今回の経緯やその後受講したファーストエイド講習会のこと、見直したファーストエイドキットの内容などについて書き残しておこうと思います。


医療関係者でもなんでもない、普段ソロメインのいち登山者ですが、この拙い記録がもしどなたかの役に立つようなことがあれば幸いです。

登山ルート

この山行で歩いたのは、パノラマ銀座のうち、蝶ヶ岳を除く燕岳~常念岳のルートです。

中房温泉からスタートし、パノラマ銀座の稜線を歩いて、一ノ沢に降りました。
2泊3日で歩く方が多いルートだと思いますが、休みの日程に余裕があったことと、友人が縦走慣れしていないこともあり、余裕を持って3泊4日にしました。(道中のテント場全部泊まるスタイル)

骨折した場所

常念小屋から一ノ沢に降りるルート上、最終水場・胸突八丁より少し下ったあたり。
難所でもなんでもない、普通の土の登山道です。
たぶん高低差30cmかそこらの段差というか、小さな斜面のようになっていて、連日雨も降っており、滑りやすい状態ではあったようです。応急処置をしたりしている間に、「滑りやすいので気をつけてください」と声掛けをしていたにもかかわらず、同じところで3人滑っていました。

骨折の発生状況

この山行中、友人の希望もあり、基本的にはわたしが先行し、そのすぐ後ろを友人が歩くようにしていました。
理由は主にペースが速くなりすぎないよう抑える為です。

事故が起きたのは午前10時頃。
その段差を通過した直後、後ろから「あっ」と友人の声がしました。
振り返ると友人が転倒していて、「まずい」「ヤバい」と呟いています。

足首やったな、これはもしかしてヘリ案件になるかもしれないな、と内心思いつつ、過去にグループ山行で同行者の怪我を何度も見てきたせいか、意外と冷静でした。

転倒時の状況を聞くと、そこの斜面で足を滑らせてバランスを崩して転倒し、足首を内側に捻って荷重が右足首にかかったよう。

幸い登山道のすぐ脇に休めるスペースがあったので、ザックを下ろしてもらい、そこに移動。


靴と靴下を脱いでもらって足首を見ましたが、この時点では外見上ほとんど変化はありませんでした。
足首周辺に親指で圧をかけつつ反応を見ると、「まあ痛いは痛いけど、大丈夫だと思う」とのこと。
以前見た骨折の人はかなり痛がっていたので、このときはそれと比較して、捻挫かな?と思いました。

※ 急に腫れ上がってしまい脱いだ靴が履けなくなることもあるようで、一概に「靴を脱がせるべき」とも言えないようです。

応急処置①アイシング

何はともあれ、患部を冷やしたい。
沢の水に足を漬けられればよかったのですが、すぐに沢に下りられる場所ではありませんでした。(一ノ沢ルートは、登山道が一ノ沢に並走するルートになっていて、沢に下りられるポイントが何箇所もあります)

幸いにも10分くらい前に最終水場で汲んだ水が1リットルはあり、洗浄用に持っていたペットボトルよりはまだ冷たいので、この水で手持ちのタオルをビシャビシャに濡らして冷やしました。
氷等を使ったアイシングほどの効果は見込めませんが、やらないよりはマシだろうと。

予約していたタクシーをキャンセル

ヘリを呼ぶか友人に確認すると、「ゆっくりなら歩けそうだし、歩いて下りる」とのこと。
受傷地点から登山口までの所要時間は、標準コースタイムで2時間程度です。でも、足首を負傷したとなれば当然いつも通りのペースでは歩けないので、実際どれだけかかるのかは歩いてみないとわかりません。

沢筋にもかかわらず、いくらか電波が入る場所だったので、小屋前で予約していた安曇野観光タクシーさんへキャンセルの連絡をしました。

電話に出た方は友人をとても心配してくださり、
「あそこは相当下まで歩かないと携帯の電波が入らないんですよ。○時と○時に他のお客さんの予約があるんで、早めに現地に着いておくようにしますから、下山したら運転手に声をかけてください。携帯つながらなくても無線でタクシー手配できますから」
と教えてくださいました。
携帯の電波が入らなくてもタクシー無線はつながる、ということは思いつかなかったのでありがたかったです。考えてみれば、登山で無線使う人、いましたね……。

応急処置②湿布・テーピング

湿布を貼り、テーピング(スターアップ)。
テーピングテープはカットしたものを持参しており、潤沢にあったわけではなかったので、最後その上から包帯で固定しました。

テーピングテープはどちらかというと膝痛等の予防の為に持っていて、過去に自分で使ったのもほぼ予防目的。捻挫したときなどの応急処置としてのテーピングはやや心もとなかったです。

荷物の詰め替え

できるだけ友人の負担を軽くする為、友人の荷物を極力軽くしました。
入山時の友人のザックは15kg(グレゴリー/ディバ60)、わたしのザックは11kg(山と道/ONE)。

ONEの耐荷重が11kgだった為、友人のディバに重いものを詰められるだけ詰め、残った軽いものをわたしのONEに詰めて、ザックを交換しました。
最悪ヘッデン下山になる可能性も考えて、ヘッデンはすぐ出せるところに。

こういうときに迷わずダブルザックできるとかっこいいよな、と思いつつ、おそらく20kgちょっとしか背負えていません。測ったわけじゃありませんが、金物だらけの雪山テント泊縦走ぐらいの感覚でした。
それでも少しは怪我人の負担は軽くなるので、ある程度の重さを背負って歩けるといいように思います。
二人して怪我してしまうとマズいので、あまり無理はしません。

下山

日曜日ということもあり、応急処置したり電話したりしている間にも、たくさんの登山者が通りかかります。
みなさんとてもお優しく、本当に多くの方が「大丈夫?」「薬ある?」「湿布ありますよ!」等々お声がけくださいました。

下山時、友人は、とてもとても頑張りました。
弱音ひとつ吐かず、標準コースタイム2時間のところを4時間以上かけて、最後まで自分の力で歩ききりました。
一ノ沢登山口では死んだ魚のような眼をしていたけど、そりゃそうだよね。本当に、本当によく頑張ったよ……。

ちゃんと病院行くんだよ。え?仕事??いいから病院行きなさい!!足めっちゃ変色して腫れてんぞ!!!

・・・・・・

登山口にいらっしゃった安曇野観光タクシーの運転手さんに事情を説明して、タクシーを呼んでもらえるようお願いすると、
「ああ、○○さんですね。ご友人の方、お怪我は大丈夫ですか?」
と声をかけてくださり、お気遣いが本当に嬉しかったです。

一ノ沢登山口のトイレは一ノ沢から水を引いていて、とても冷たい水だったので、改めてその水で足を冷やしつつ、40分くらいタクシーを待ちました。

日帰り温泉「しゃくなげの湯」で4日分の汗と汚れを洗い流し、友人は水風呂で足を冷やし、応急処置をやり直し、ご飯を食べて、ほっと一息。

駅までのタクシーを手配して、建物の外で荷物を整理していると、登山口でタクシーを呼んでくださった運転手さんが偶然そこにいらっしゃいました。「大丈夫でしたか?お大事にしてくださいね」と。
心がじんわりしました。

捻挫と骨折は今回のように判断がつかないことも多く、応急処置はあくまで応急処置であって治療ではありません。
予後を考えると一刻も早く病院に行くのがいいのでしょうが、運転手さんに近隣の病院のことを聞いた上で、本人が「今日は帰る」と言うので帰ることにしました。

診断結果

捻挫じゃなくて骨折していました。足関節外果骨折。足首を内側に捻って負荷がかかったときによく起きる骨折だそうです。

本当によく4時間以上も歩いたよ……。
1週間入院して手術し、退院後もしばらくは松葉杖生活し、手術から一か月半と少しほどでようやくギプスが取れました。
受傷から全治2か月といったところでしょうか。

初めてのアルプステント泊縦走でこんな目に遭って、もう彼女は山なんて辞めてしまうんじゃないかと思っていました。

……が、後日 松葉杖をつきながら意気揚々とツェルト泊講習に現れ、下山時に交換して背負ったONEが気に入ったのか色違いで買ったそうで、新たに山の講習の申込みもしたらしく、なんというか、杞憂だったようです。

骨折の原因を考える

荷物が重すぎた?

これはありそう。出発前日の時点でパックウェイト10kgと聞いていたので心配していなかったんですが、蓋を開けてみれば当日は15kgになっていました。
慣れない重さそのものの負荷と、もしかしたらパッキングによって重心が高すぎたりしてザックに振られて踏ん張りがきかなかった、とかいうこともあるかもしれません。

体力が足りない?

これはどうだろう。疲労困憊状態だと、確かに足取りが重くなったり注意力散漫になったりして転倒リスクは高まります。
が、彼女は日帰りだと多分わたしより早いくらいで足取りもしっかりしているし、体力そのものがないわけではないような気もします。

筋力・バランス能力が足りない?

これはあるのかもしれない。下肢の筋力やバランス能力が低下すると転倒リスクが高まる、と聞きます。高齢者の転倒リスクの話の中で語られていることが多いですが。
とはいえ、街中と比較すると不整地である登山道では、街中を歩くよりも下肢の筋力やバランス能力はより必要になりそう。

環境要因?

初日を除き、朝は快晴・夕方土砂降りという典型的な夏山天気が続き、土の登山道は濡れていて、滑りやすい状態ではありました。

足運びの丁寧さ?

滑りやすい状態だったとはいえ、滑らず通過していく人の方が遥かに多かったので、より慎重に足の置き場を選んでいれば、体重移動を丁寧にしていれば、避けられた骨折だったかもしれません。
下山中は上りよりもスピードが出やすく、意識していないと足運びが雑になりやすいかも。

原因は色々考えられます。
同じ場所で滑って転んでいる人もいましたが、他の人は怪我には至っていませんでした。

転んだときの体勢によっても、後ろに転倒していればザックで守られたかもしれないし、荷重の程度や角度によっては骨折までいかず捻挫で済んだかもしれない。

後から色々考えたところで、はっきりと「これが原因でした」と断定できるものでもないと思います。でも、何かトラブルが起きた時は、できるだけ丁寧に振り返ってみて、考えられうる原因をできるだけ排除していくしかないのかな、とも思いました。

登山中のファーストエイド講習会に参加してきた

自分や同行者、通りすがりの登山者が怪我してしまった時、できるだけなんとかできるようになりたい。

そう思って、先日、東京都山岳連盟の主催する「山のセルフレスキュー講座Ⅱ『山のファーストエイド(救急法)』」に参加してきました。

東京都山岳連盟の「山のセルフレスキュー講座Ⅱ『山のファーストエイド(救急法)』」

www.togakuren.com

受講料は一般:6,600円(消費税込)


jRO・ココヘリ会員割引で500円引とはいえ、わたしにとっては一瞬躊躇する料金。

が、登山向けの実技込のファーストエイド講習自体数が少なく、元山岳救助隊の方に教えていただけるということもあり、深呼吸してえいやっと申し込みました。


当日の会場は、おそらく定員埋まったんだろうなと思われる盛況ぶり。

  • 元山岳救助隊の方に直接教わることができる
  • 実際に山中で怪我人に遭遇したことを想定しての具体的な実技講習(安全確保・三角巾での処置・搬送など)がメイン
  • 座学も即効性のある内容(ファーストエイドキットの内容と取捨選択・救助要請の判断と具体的なやりとりの内容など)
  • 質問し放題
  • リクエストに応えてくれて、知りたいことを実技込みで教えてくれる
  • 定員少なめ(25人)で、5-6人ごとの班に分かれてそれぞれに都岳連メンバーの班長がつく

わたしは都岳連会員でもなんでもない登山者で、「都岳連」という看板に気後れしていたんですが、講師の方も都岳連メンバーの方もとても気さくな方々で、いい意味でイメージを裏切られました。

参加者も、決して安くはない参加費を払っているのもあってか、絶対身につけて帰るぞ!と積極的な方ばかり。

講習会と言っても本当にピンキリで、過去には正直「時間を無駄にしたな……」と思うものもありましたが、今回は質の高い、割と実践的ないい講習でした。

(費用をかけられるので当たり前と言えば当たり前なんですが、無料講習よりは有料講習の方が有益な内容のことが多いように思います)

一度の開催で面倒見られる人数は限られるだろうし、とはいえ内容的に多くの登山者が知っていた方がいいだろう内容だから、年1回といわず、もっと開催回数増えたらいいのにな。

あと受講料。知識の裾野を広げる意味でも、若い人だけでも4,000円くらいにならないかなぁ……。


(写真・動画の撮影は個人用途に限りOKで、SNS等での公開NGとのことでしたので、講習会の写真はありません)

ファーストエイド講習会を受けたあと、改めて自分の応急処置を振り返る

RICES処置できていた?

捻挫(と思っていたので……)の時の応急処置として、「RICES」処置が知られています。

  • Rest(安静)
  • Ice(冷却)……………… 腫れの抑制・痛みの緩和
  • Compression(圧迫)… 内出血や腫れの抑制
  • Elevation(挙上)……… 腫れ防止
  • Support(固定) ……… 患部の負担軽減

Elevation は完全に頭からすっぽ抜けてました。
が、それ以外は、一応は対応できた……かな?
Ice に関しては、「もちろん冷やすに越したことはないが、山中で対応が難しい場合は、アイシングにこだわり過ぎずにさっさと圧迫した方がいい」とのことでした。状況に応じて。

足首を捻挫したときのテーピング

足首の捻挫のテーピングで検索すると、様々なやり方が出てきますが、アンカー巻いて、スターアップ→フィギュアエイト→ヒールロックができればOK。

アンダーラップは皮膚の保護を考えればあるに越したことはないけど、無ければ無いでOK。(この場合、テープを剥がすときは皮膚が持っていかれないように、少しずつ優しく剥がす)

鬱血防止のため、テーピングはキツく巻きすぎないよう注意。

……とのことでした。

手持ちのテーピングテープが少なく、スターアップしか出来ていなかったので、ロールで持っていくか、カットテープでももう少し量を増やそうかな。
もっとしっかり固定できていれば、少しでも痛みをマシにできたんじゃないかという気がしました。

ファーストエイドキットの中身を再考する

実際に応急処置するときに思ったのは、当然のことですが「ないものは使えないな」ということです。
かといって際限なくものを持って行けるわけでもなく、どの程度の怪我に備えるかということになると思います。
また、使いたいものがないときに、ありもので何とかするのも大事。

登山中のどんな状況に備えよう?

自分自身が登山する中で、直接遭遇した怪我等は以下のとおりです。

  • 足首の捻挫
  • 足首の骨折
  • 手の擦り傷
  • 足がつる(こむら返り)
  • 虫刺され
  • 打撲
  • アイゼンの刃による切り傷

こむら返りを除き、ほかは全て転倒がきっかけで起きていたので、まずは山の中で転ばないことがとても大事かな、と思います。

その上で、極端に狭い観測範囲ではありますが、これらにある程度対応できれば、怪我対策としてはそこそこなのかな……?

骨折と明らかに分かる・捻挫でも重症で歩けないような場合は即救助要請でいいと思いますが、救助要請したからといって街中の救急車のようにすぐに来てくれるわけでもありません。

どんなに早くともまず数時間は待機時間があるものと思っておいた方がいいでしょう。

ですので、プロに引き渡すまでの間の骨折の応急処置についても、実践できた方がいいだろうな、と思いました。

登山中の打撲・捻挫・骨折の為のファーストエイドキット

  • 湿布
  • テーピングテープ 1巻(非伸縮の方が固定力が高い)
  • 副木・副木を固定するもの(ストック等の硬いものを使う時は、タオル等の緩衝材を追加。クローズドセルタイプの座布団も使える。固定には三角巾・粘着包帯など)

切り傷・擦り傷等、出血時の為のファーストエイドキット

  • 絆創膏(各種サイズを少量ずつ。山の怪我は患部が大きくなることが多いので、大きいサイズのものも)
  • 滅菌ガーゼ・包帯or三角巾(開放骨折・頭部など、絆創膏を貼れない・絆創膏では対応しきれないときに。三角巾は105cmのものがおすすめ)
  • 穴をあけたペットボトルの蓋(傷口洗浄用)
  • 使い捨て手袋(感染予防)

足がつったとき(こむら返り)の為のファーストエイドキット

  • 芍薬甘草湯(市販薬)

虫刺されの為のファーストエイドキット

  • ステロイド外用薬(リンデロン軟膏等)

その他入れているもの

  • はさみ
  • ピンセット
  • ダクトテープ
  • 風邪薬・胃腸薬・解熱剤
  • 目薬
  • 予備コンタクトレンズ など

その他もろもろ

粘着包帯が便利そう

三角巾、止血や固定や腕吊り等いろいろ使えて便利だけど、ソロ登山者の場合は、利き手など固定箇所によってやりづらいこともあります。

そんな場合には、粘着包帯が便利だそう。
実際、わたしも普通の包帯を使ってみて、「粘着包帯の方が絶対便利だな」と思ったので、入れ替えようと思います。

腕の固定に使える小技

あと、腕の骨折時の固定には三角巾があると楽ですが、ない場合はレジ袋で代用して吊ることもできます。

www3.nhk.or.jp

ファーストエイドキットの中身を少し変更

今回の諸々を経て、少し中身を入れ替えることにしました。

  • 普通の包帯 → 粘着包帯 に変更
  • テーピングテープ(カット)→ テーピングテープ(ロール) に変更
  • 三角巾を追加

あとは、出血量が多い時の止血にも使えて、思いもよらぬ不順にも対応できる生理用ナプキンを追加しようかな……と思っています。

まとめ

ファーストエイド、100%これなら正解!というものはありませんが、なんとなく持っていくよりは、具体的に使うシーンを想像して、自分が扱えるものを持っていく方が無駄にならないんじゃないかな、という気がします。

でも、「結局なんも使わんかったわー」となるのが一番いいんですけどね……。


主観に満ちた長文をお読みいただきありがとうございました。
ご指摘がありましたら、優しめにお願いいたします……豆腐メンタルなので……。